車の運転動作の中で「苦手意識がある」と感じているドライバーも少なくない車線変更ですが、2つのミラーの見方と死角を理解し、車線変更時の確認ポイントを意識することで、安全に車線変更を行うことができます。
バックミラーは、車内上部のミラーのことで「ルームミラー」とも言い、車両の後方を映すミラーです。
信号待ちなどで停車中、バックミラーを見た時に「後ろの車が近い!」と感じたことはありませんか?
特に、ボンネットが短いハイエースなどのワゴンタイプやトラックなどは、余計に近く見えてしまいます。
しかし、実際には数メートル離れている場合がほとんどです。
以下の写真は、運転席から見たバックミラーに映る茶色いフェンスです。
この時、車とフェンスの間の距離はどのくらいあると思いますか?(車の全長:4.7m)
フェンスがかなり近いように見えますが、実際には53cmの距離があり、人ひとり通れるくらいのスペースが空いています。
また、運転席から後方を肉眼で見た時はこのように見えます。
このように、バックミラーは肉眼で見る距離感と近い映り方となります。
※後付けのバックミラーには、平面鏡よりも広い範囲が映る曲面鏡やサブミラーもあります。
バックミラーの死角範囲は、リアガラスよりも低い位置の後方数メートルです。
縁石などの障害物や小さな子供、小動物は死角に入ってしまうため、事前にしっかりと確認をしておくことで衝突を防ぐことができます。
サイドミラーは、車両外部の左右のミラーのことで、車両のサイド〜後方を映すミラーです。
サイドミラーは、小さな面でもより広範囲が映るようになっているため、バックミラーよりも遠くに見える場合が多いです。(車種によって曲率が異なる)
「サイドミラーに映った後続車が遠く見えたので、車線変更をしたらクラクションを鳴らされた」というのは、サイドミラーに映る車と後方から来る車の実際の距離感を見誤った時に起こります。
先ほどのバックミラーに映るフェンスで比べてみると、サイドミラーに映るフェンスは少し遠くにあるように感じます。
このように、バックミラーとサイドミラーでは見える範囲や見え方が異なるため、それぞれの特性を理解することが大切です。
特に、運転に不慣れの人がやりがちなサイドミラーのみでの車線変更はとても危険です。
高速道路で100km/hの車が1秒間で進む距離は約28mなので、「行けるかな、大丈夫かな、どうしよう」と考えているうちに、あっという間に死角に入ってきてしまいます。
安全確認不足による車線変更は、「急な割り込み」や「幅寄せ行為」となり、煽り運転などのトラブルにつながる可能性があるため、気をつけなければなりません。
サイドミラーの死角範囲は、両サイドの後方部分です。
追越車線を走る車をサイドミラーで見ると、一定距離のところでサイドミラーに映らなくなります。(=死角に入る)
サイドミラーに映らなくなった後すぐに、自車の真横に現れ追い越していきます。
このため、死角範囲を走り続けると、自車の存在が相手ドライバーに認識されにくくなるため、急な割り込みなどが起こりとても危険です。
目視とは、自分の目で見て確認するということで、ミラーやピラーの死角を確認するために目視を行います。
車には、ボディとルーフをつなぐ「ピラー」という支柱があり、部位によって呼び名が異なります。
特に、フロント部分の「Aピラー」は左右折時に死角となりやすいため、必ず目視を行わなければなりません。
このピラーの太さは、車種によって異なります。
「ピラーが太い=死角が多い、ピラーが細い=死角が少ない」のですが、衝突時の衝撃から守る力は太いピラーの方が安全度が高いです。
まずは、バックミラーとサイドミラーで右車線の車の流れを確認し、途切れるところがあるかをチェックします。
車の流れが確認できたら、ターゲットになる車(この車の前に入る)を決めます。
ターゲットの前走車が通り過ぎたら、サイドミラーでターゲットとの距離が十分にあることを確認し、さらにバックミラーにもターゲットが丸々映っていれば、十分に距離があるということになります。
バックミラーにターゲットが半分以上映っている場合は、距離が近いため割り込みになる可能性があります。
最後に、目視で安全確認をしてから車線変更をします。
[jin_icon_car] ウィンカーのタイミング
道交法では「進路変更の3秒前もしくは30m手前」と定められていますので、ターゲットの前走車が通り過ぎそうなタイミングでウィンカーを出すと良いでしょう。
ウィンカーを正しく出すことで、普通のドライバーであれば多少スピードを調整してくれます。
[jin_icon_car] ハンドルの切り方
車線変更時のハンドルは、真横に切るのではなく斜め右前に進むイメージで進入しますので、ハンドルは気持ち右に傾ける程度で十分です。
[jin_icon_car] 減速はしない
車線変更することに気を取られて減速してしまうドライバーがいますが、後続車にブレーキを踏ませないためにむしろ加速するイメージで進入します。
元々の右車線の車の流れを乱さないように、減速はせずに速やかに行うことを心がけましょう。
ほとんど流れていない渋滞中にやむを得ず車線変更をしたい場合は、明確な意思表示をすることが重要です。(基本的にはむやみに車線変更はしないようにしましょう)
早めにウィンカーを出して「前に入れてほしい」というアピールをすることで、普通のドライバーであれば進路を譲ってくれます。
[jin_icon_car] わざと詰めてくる車に注意
車線変更を妨害する余裕のない、あるいは、見えていない視野の狭いドライバーもいるので、正しくウィンカーを出しても詰めてくるようであれば、接触事故のリスクがあるのですぐに諦めましょう。
ただし、自車に非がある場合には譲ってもらえないこともありますので、ルールやマナーはしっかり守りましょう。
・混雑時の合流で「1台ずつ進入する」という暗黙のルールの中、前の車に続いて連続で無理やり入ろうとする
・左折帯が渋滞している中、空いている直進帯を走行し、ギリギリで左折帯に割り込みする(休日のSA混みなどでよくある)
[jin_icon_caution] トラックと乗用車の接触事故
0:25〜 トラックの方が先にウィンカーを出して進路変更した先が、乗用車の死角に入り、乗用車の確認不足によって接触しています。
[jin_icon_caution] 乗用車同士の接触事故
0:07〜 前方のバスを追い越そうとしたところ、確認不足によって死角から来た乗用車と接触しています。
[jin_icon_caution] 乗用車の道交法違反による割り込み
0:10〜 赤色乗用車が右車線に車線変更をしようと割り込み、後続車にクラクションを鳴らされています。
「イエローカット=車線変更が禁止されている区間」での割り込みは、赤色乗用車の道交法違反ですので、クラクションを鳴らされても仕方ありません。
ちなみに、0:07〜 の乗用車もイエローカットしているので道交法違反です。
[jin_icon_kirakira] 理想の車線変更をするトラック
きちんと距離を取ってから、進路変更の約3秒前にウィンカーを点灯させ、速やかに車線変更をしています。
「進路変更の約3秒前(または30m手前)にウィンカーを点灯させる」というのは、道交法でも定められているルールです。
車線変更に苦手意識がある人には、「ブラインドスポットモニター」という死角を監視する装備を付けることをおすすめします。
ブラインドスポットモニターとは、左右斜め後方の死角をレーダーで監視し、死角エリアに他の車や自転車などがいる場合に、
ドアミラーに内蔵されているインジケーターが点灯し、ドライバーに警告するシステムです。
死角の見落としを防げるため、より安全に車線変更ができます。
車種によって、設定の有無や標準orオプション装備であるかが異なります。
また、一定以上の距離まで近づくと警告音が鳴ったり、危険と判断した場合にブレーキの自動制御をしてくれる車種もあります。
[jin_icon_check] ブラインドスポットモニターの機能詳細はこちら↓
【2020年最新版】ブラインドスポットモニター搭載車一覧|国産車&輸入車ラインナップ
車線変更の基本は、バックミラー、サイドミラー、目視できちんと確認することです。
進入する車線の車の流れを乱さないことを心がけてスムーズに加速しましょう。
また、急な分岐などで、急いで車線変更をしなければならなくなった時は、無理をせずに迂回した方が良いです。
「行けるかわからないけど、突っ込んじゃえ!」というのは、本当に危険です。
親切なドライバーは正直少なく、「割り込みされた!」「幅寄せされた!」と激昂するドライバーも多いので、事故・トラブル防止のためにも時には諦めることも大切です。